2000.02.14
きっと甘やかな夜
〜 1 〜






「ぜふぇるサマ〜、包ミ紙ハ青ニシマス?ソレトモぴんくデッカ〜?」
「ばっきゃろー!オレ様がそんな色使うとでも思ってんのかてめーっ?!」
 小さな身体で紙を抱えてがしゃがしゃと歩いていた、その動きが止まる。何か考え込む様にスコープを暫く動かした後、ぴたりとゼフェルを見た。
「……似合イマスヤロ」
「て……っめ、このクソロボット!」
 振り上げられたスパナに反応して、持っていた紙を放り出し頭を抱えてぎゅいーんとモーター音を響かせ逃げ惑う。
「マタ乱暴シハル〜」
 ばたばたと散らかった部屋の中で追いかけっこが始まるが、程なくゼフェルの忌々しげな舌打ちで終了となった。どっかと床に座り込み頭を掻く。来客の為だけに置かれたソファの後ろにでも隠れたのか、紅い視線の届くところには影を見つけられなかった。溜息をつきながら手にしていたスパナを放り出す。
「ったく、頭にくる奴だっ」
 きゅ、と床の上で方向変換をする音が聞こえた。見れば、ソファの影からゼフェルの方を窺うように顔を覗かせている。ぎ、と睨むけれどこたえた様子は無い。
「コウイウフウニぜふぇるサマガぷろぐらみんぐシハッタンデッシャロ」
 正論。だからといって当の本人がそれで納得する筈も無く。
「うっせー!てめーは黙って紙持って来いってんだ!」
「……ぴんくデ好インデッカ?」
 今度は、無言のままスパナが投げつけられた。



 黒のボール紙で箱を作れ、と言いつけると、手元に置かれた銀色の箱に視線を落とした。表面にマット加工が施され手の平にすっぽりと収まるくらいの、鈍く光る小さな箱。恐らく材質は金属なのだろうが、不思議なことに蓋らしきものが見当たらない。どちらが上でどちらが下なのかすらわからない、まったくの立方体。手に取って耳元で左右に幾度か振ってみて、音がしないことを確かめると紅の瞳がにやりと笑った。
 ふと脇に目を転じると、きしきしと音を立てながら、自分が入りそうなくらい大きな箱を作っている姿が見えた。傍に転がっていたドライバーを手に取ると、ぽんぽんと幾度か投げ上げてから、ひゅっ、と放り投げる。ややして、かつーんと硬質の音が部屋に響いた。途端に上がる電子音の悲鳴。
「チャント仕事シテマスノニ、何シハルンデッカ〜」
「バカヤロー!誰がそんな大きな箱作れっつったよ!」
 作りかけの箱を放り出し、きゅいきゅいと部屋の隅に逃げる。
「ダッテさいず言ワナカッタヤナイデスカ〜」
 次の瞬間、鋼の守護聖の私邸中を、ゼフェルの怒声が覆い尽くしていた。





◇     ◇     ◇






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